Share

23話-2 再会と昇格。

last update Last Updated: 2025-05-19 20:01:42

ルークス皇帝はふたりの言葉を聞いた後、再び口を開く。

「神隠しに合った少女達も帝都郊外の村まで無事に送り届けることが出来たそうで何よりだ」

「第3部隊、第4部隊の半分以上を失ったようであるが」

「お前達が無事に生きて帰還したこと、大変嬉しく思うぞ」

ルークス皇帝はそう言い、エルバートを見据える。

「さて、エルバートよ、フェリシアが祓い姫に目覚めたそうだな」

「はい」

「では後日、お前達の受勲式に加え、フェリシアの祓い姫の認定式と令嬢式を執り行うとする」

――こうして早急に準備が進められ、その間、エルバートはフェリシアとリリーシャと共にブラン公爵邸に無事に帰宅し、ラズールとクォーツに、よくぞ帰って来られた、ご無事で良かったと温かく迎えられ、

翌日には教会にもフェリシアと2人で足を運び、司祭に礼をし、その翌日。

エルバートとクランドールの受勲式とフェリシアの祓い姫の認定式と令嬢式が皇帝の間にて執り行われた。

エルバートの父であるテオと母のステラ、公爵、伯爵等の偉い方々に見守られながら、

高貴な軍服を着たエルバートはクランドールに続き、ルークス皇帝から勲章を受け取る。

それに引き続き、第1部隊のクランドールの隊長、第2部隊のエルバートの隊長のアベル、第3部隊、第4部隊の隊長、計4名も表彰され、

少し間を取り、高貴なドレス姿のフェリシアは玉座の踏段を上がっていく。

そしてルークス皇帝に右手の甲を差し出し、その手にルークス皇帝が触れた瞬間、右手の甲に印が表れ――、

フェリシアは祓い姫だと認められると同時に、

皇帝の側近、セレストの公爵令嬢へと昇格した。

* * *

その後、フェリシアはルークス皇帝の側近に、エルバートの両親が客間で待っていることをエルバートと共に聞かされ、ふたりに会うこととなった。

フェリシアはエルバートと並び、廊下を歩く。

「フェリシア、すまない。嫌な思いをさせるかもしれない」

「いえ、大丈夫です」

やがて客間に着くと、後ろから付いて来

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   26話-1 ご主人さまと隣国へ。

    フェリシアはエルバートと共に瞳を閉じ、涙を流す。初めてのキスは月明かりのように優しく温かなものだった。* * *そして年が明けた翌日の朝、フェリシアはルークス皇帝の命令でバルコニーに参列することとなった。ルークス皇帝が中心に立ち、左隣のエルバート、右隣のゼインに囲まれ、エルバートの横にフェリシア、ゼインの横にクランドールが立ち並ぶ。(宮殿にお勤めしているとはいえ、わたしがこのような場に立って良いのかしら……緊張するわ)フェリシアはふと、しっかりなさい、とエルバートの母に言われた言葉を思い出す。そうだ、自分はもう令嬢に昇格したのだ。しっかりしなくては。ルークス皇帝が集まった大勢の民と宮殿に仕える者に向けてお言葉を述べる。「新年を無事に迎えられたこと、大変嬉しく思う」「そして、アルカディアの民、宮殿に仕える者全てに感謝し」「今後も皆の為にアルカディア皇国を守り尽す」ルークス皇帝がお言葉を述べ終わると、ワァッと歓声が上がる。ルークス皇帝は笑顔で手を振り、フェリシア達も続けて手を振った。そして夜、新年の祝賀会が大広間で開かれ、豪勢で華やかな料理が白いクロスのかかった各テーブルに並べられ、皆がその料理を食べ、ワインを始め、様々なお酒を飲み明かす中、フェリシアの料理、牛の赤ワイン煮込みはバルコニーに参列した者と皇帝の側近のリンク、エルバートの側近のディアムのみ食すことをルークス皇帝に許された。「軍師長達だけフェリシア様の料理を食べられるだなんてずるいですよー」「これが絶対的権力」赤ワインのグラスを持ったカイとシルヴィオがそう続けて言うと、エルバートがふたりに冷ややかな殺気を飛ばず。「ふたりともその辺にしておいた方がいい」同じく赤ワインのグラスを持ったアベルがなだめ、エルバートが息を吐く。「私の部下達が失礼なことを」ゼインはにこりと笑う。「大丈夫ですよ、このような美しい料理を見たら誰でも食したくなります」「羨ましがるのも仕方ない

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-6 月を共に見れたなら。

    * * *それから一週間、フェリシアはエルバートとは一切口を聞かず、朝昼晩の食事も別々でシエル達やディアムに心配されつつも年越し前日の夜となった。今宵も食事室で一人の食事。(ご主人さまと出会う前のよう)(ご主人さまを怒らせたのはわたしのせい。なのに今もこんな酷い態度を取ってすれ違って)(年が越えたらご主人さまと隣国に行くというのに)これだから自分はだめなのだ。今となってはもう許してもらえないかもしれないけれど、それでも諦めたくない。フェリシアはそう思い立ち、席から立ち上がり、食事室を出て執務室まで駆けて行く。「ご主人さま、フェリシアです。執務中に申し訳ありません、その」フェリシアが扉の前でそう言うと、内側から扉が開き、必死な顔のエルバートが出て来た。「フェリシア、何かあったのか?」一週間も酷い態度を取り続けていたのに、心配してくれるだなんて。「あります」「ご主人さま、怒らせたわたしが悪いのに、ずっと酷い態度を取ってしまい、申し訳ありません」「許させないことは分かっております。でも、わたし」「ご主人さまと、月が見たい、です」(あ、ご主人さま、冷たい顔をして……。やっぱりもうだめ――――)「フェリシア、私の方こそ、怒り酷いことを言ってしまってすまなかった」エルバートはそう謝罪し、優しく微笑む。「月を見に行こう」* * *しばらくして、フェリシアはある部屋の前にエルバートと共に辿り着く。「あの、ご主人さま、ここは?」「宮殿での私の特別な部屋だ。気分を入れ替えたい時にたまにここへ来る」エルバートはそう説明し、扉を開ける。キャンドルが美しく灯る、落ち着いた休憩室のような部屋だった。「先に白ワインでも飲むか?」「は、はい。わたしが注ぎます」フェリシアはエルバートの代わりに白ワインをふたつのグラスに注ぎ、乾杯して白ワインを飲む。「美味しいです」「それは良かった」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-5 月を共に見れたなら。

    「かしこまりました」フェリシアとエルバートは同時に言い、跪いたまま深々と頭を下げた。* * *その後、エルバートはフェリシアとゼインと共に皇帝の間を出る。「エルバート様、少し宜しいでしょうか?」ゼインが問う。「フェリシア、先にディアムと共に部屋に戻っていろ」「かしこまりました」フェリシアはディアムと共に廊下を歩いて行く。「それでお話とは?」「最近、フェリシア様とルークス皇帝、良い雰囲気のようですね」確かに仲の良い噂はあちこちで聞く。見ていても分かる。「ルークス皇帝の側近から先日お聞き致しましたが」「寝室で共に月を眺められたとか」エルバートが両目を見開くと、ゼインはエルバートの耳元で囁く。「……ルークス皇帝の方がフェリシア嬢とお似合いだと思います」エルバートは冷たい顔でゼインを見ると、ゼインは優しく微笑み、それではまた、と言い、去って行った。* * *その日の深夜。フェリシアは眠れず、部屋の近くの廊下で静かに灯るキャンドルを見つめているとエルバートと偶然会った。「フェリシア、一人か?」「はい。シエルさん達には許可を頂いておりますので大丈夫です」フェリシアがそう言うと、エルバードは、はーっと息を吐く。「見回っていたから良かったものの、お前はそうやっていつも一人で行動するが、お前はもう令嬢なのだぞ。宮殿内は安全とはいえ、何かあったらどうするつもりなんだ?」「も、申し訳ありません……」(わたしを心配して怒ってくれたのは分かるけれど、なんだか、ご主人さま、いつもよりお顔が冷たく怒っているような……)「ゼイン殿下から聞いたが」「ルークス皇帝と寝室で共に月を眺めたそうだな」フェリシアの瞳が揺らぐ。「あ、あの、それはお呼び出しされてっ……」「やはり、勤めを承諾し、お前を宮殿入りさせるべきではなかった」

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-4 月を共に見れたなら。

    「ほら、今宵の月は美しいであろう?」「は、はい」(こんな目を輝かせて嬉しそうなルークス皇帝は初めてだわ)「身の上話となるが、我はエルバートよりも早く、幼き頃から亡き前皇帝の命令で婚約者候補を与えられていた」「しかし、どの者も地位や権力目当てで、我は断り続け」「ここでエルバートと共によく月を見ていた」(ご主人さまは無心になる為に時々月を眺めるようにしていると前に仰っていたけれど、ルークス皇帝の影響だったのね)ルークス皇帝は月から目線をずらし、フェリシアをじっと見つめる。「だからエルバート以外と月を見るのはお前が初めてとなる」「今宵はしばし、こうして隣で眺めていてはくれないか」(ほんとうは一番にご主人さまと宮殿の月を見たかったのだけれど、ルークス皇帝にそう言われてしまっては拒めない)「わたしで宜しければ、かしこまりました」フェリシアは気持ちを押し殺し、承諾した。* * *その2日後のこと。フェリシアはエルバートと共にルークス皇帝にお呼び出しを受け、門番により開かれた皇帝の間の扉から、髪を一つにくくり、高貴な軍服姿のエルバートと共に中に入る。すると王座の階段の前に何者かが立っているのが見え、床に敷かれた長いレッドカーペットの上をそのまま歩いて行く。王座の階段の前に立っていたのは、美のかたまりの容姿をした高貴な貴族服姿の青年だった。(白き龍のような美しいお方)「エルバートは何度か会っているが、この者は、ゼイン・ヴェルト皇子だ」ルークス皇帝がフェリシアに向けて言う。(え、この方がゼイン・ヴェルト皇子殿下!? 厨房でルークス皇帝と血の繋がりはないけれど次期皇帝だと噂されていたわ。確かお歳はご主人さまより3歳年下だったはず)「ゼイン殿下、初めまして。フェリシア・フローレンスにございます」「フェリシア嬢、初めまして。お噂は聞いておりましたが、やっとお目にかかれ、大変嬉しく思います」「ではこれより本題に入る」ルークス皇帝がそう言い、フェリシア達は並んで跪き、見据える。「隣

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-3 月を共に見れたなら。

    するとエルバートがとっさにフェリシアの体を支え、軍服を脱いで上から羽織らせ、そのままお姫様抱っこする。「ご、ご主人さま!?」「今、ルークス皇帝の側近が男達を引き付けている。今の内に行くぞ」エルバートは背を向け、フェリシアをお姫様抱っこしたまま歩き出した。その後、フェリシアはエルバートに部屋の前まで送り届けられ、エルバートが執務室に戻ろうとした時だった。ルークス皇帝が駆けて来る。「フェリシアよ、大事ないか?」ルークス皇帝にまでこんな姿を見られ、迷惑を掛けてしまうだなんて。「は、はい。この度はご迷惑を……」「謝罪は不要だ。夕食まで時間はまだあるによって、しばし休まれよ」フェリシアの言葉をルークス皇帝が遮る。「ルークス皇帝、側近を派遣して下さったこと、恩に切ります」「いや、至極当然のことをしたまでだ」エルバートはルークス皇帝と一瞬、なぜか見つめ合う。そして、エルバートはルークス皇帝を皇帝の間までお送りすると、ルークス皇帝と共に廊下を歩いて行った。* * *それからフェリシアは部屋で休み、厨房で作った夕食の仔羊のクリーム煮込みをルークス皇帝にお出しし、翌日からはユナイトに祓い姫の力の制御の仕方と治癒の呪文に加え、攻撃と守りの呪文も教わりつつ、最終奥義でエルバートと使った呪文も特訓し、腕を磨く。更にそれと合わせルークス皇帝の食事も朝昼晩と作り、目まぐるしい毎日が過ぎていき――、10日後。「ルークス皇帝がお呼びでございます」ルークス皇帝の側近が部屋までフェリシアを呼びに訪れた。フェリシアはその側近と共にルークス皇帝の寝室まで向かう。そして扉を開けてもらい、中に入る。神々しい豪華な寝室にフェリシアは臆すると扉は閉められ、フェリシアは恐る恐るルークス皇帝のお姿が見える場所まで歩いて行く。するとルークス皇帝は窓の前に立っていた。「ルークス皇帝、フェリシアにございます。今宵はお招き頂きまして、誠にありがとうございます」「フェリシアよ、肩苦しい挨拶

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-2 月を共に見れたなら。

    呪文を唱えた直後、想像以上の光が発動し、右手の傷が塞がった。フェリシアは冷や汗をかく。力は安易に使わない方がいいみたい。良かった、誰も入っていなくて。そう安堵した時、だった。男性達の笑い声が聞こえてきた。え、こちらに向かっている?普通は男女分かれているけれど、そういえば浴室ここしかなかった。(ここはもしかして、男女混浴? 男性達の声しか聞こえないし、時間も分かれているのかしら?)どうしよう、知らずに入ってしまった……。体を沈ませ隠れる?でもそれだと少しの間しか保てない。誰か、助けて。そう思った瞬間、「フェリシア様」カーテンの向こう側から双子のメイドの一人、シエル・ホワイトの声が聞こえた。「早くこちらに」双子の傍らノエル・ホワイトの声も続けて聞こえ、フェリシアは浴場から出て、カーテンの向こう側まで歩いていく。(昨晩拒んだのに助けに来てくれるだなんて)「フェリシア様、このような事態となり、大変申し訳ありません」シエルがそう言うと、ノエルと共に深々と頭を下げる。「いえ、頭をお上げ下さい。わたしの方こそ、昨晩拒んでしまい、申し訳ありませんでした」お互いに謝罪を済ませると、フェリシアはシエル達に体を拭いてもらい、下着とドレスを素早く着せてもらう。「シエルさん、ノエルさん、ありがとうございます」「当然です」フェリシアのお礼の言葉にシエル達は同時にそう返し、ノエルが脱衣所の扉を開ける。するとエルバートがなぜか立っていた。「ご、ご主人、さま?」「お前の力の気配を感じて駆け付けた」「この浴場は男性が夜、女性が朝に入る取り決めがさせているが、どうやら知らなかったようだな」「お前達、何をやっていた!」エルバートはシエル達に向かって怒鳴る。「エルバート様、申し訳御座いません」シエル達は同時にそう謝罪し、頭を下げる。「ご主人さま、もう

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   25話-1 月を共に見れたなら。

    * * *早朝、目を覚ますと、宮殿の部屋の天井が両目に映った。そうだ、昨日から宮殿でのお勤めが始まったのだった。(昨晩は食事室で両親への想いが一気に溢れ、ご主人さまの前で泣き崩れてしまったけれど)今日からは決して泣かず、気を引き締めて、頑張らなければ。そう心に決め、フェリシアはルークス皇帝の朝食、チーズトマトを合わせて焼いたキャセロールを厨房で作り、ルークス皇帝にお出しし、その後はユナイトと礼拝堂で祈りを捧げ、アルカディアの書を読んで午前は終わり、午後からは中庭でブローチを掴みながら瞳を閉じ、脳内イメージをして光の強さを感じるという祓い姫の力の制御の仕方を伝授され、治癒の呪文も教わり、特訓後。ルークス皇帝の夕食をお出しする時、このような小汚い姿ではいけないと、浴場に向かう。浴場の場所は、昨晩、寝る前に明日よりルークス皇帝の側近の代わりに案内やお世話を務めることになったと、双子のメイド、シエルとノエルが挨拶に来た際に聞いており、加えて、シエル達に令嬢はお背中をお流しされるのが常識だと言われたものの、いいです、一人で大丈夫です、と拒んでしまったのだけれど、(今になって不安になってきたわ。大丈夫かしら)そう心の中で思いながら廊下を歩いていると、風呂上がりのエルバートを見かけた。フェリシアはサッと壁に隠れる。思わずこんな姿を見られたくなくて隠れてしまったけれど、(濡れた長髪を下ろしたご主人さま、いつもよりも色っぽくてお美しい……)やがて、エルバートの姿が見えなくなり、フェリシアはハっと我に返る。(何を惚けているの。早く入らなければ)フェリシアは隠れるのを止め、浴場の扉まで歩いて行き、扉を開ける。立派な脱衣所。カーテンで仕切られ、その向こう側に浴場があるよう。そう認識したフェリシアは脱衣所でドレスを脱ぎ、床を歩いていき、カーテンを開けた。浴場は大理石で囲まれ美しく豪華で、まるで湖のように広く、床も同じ石で埋め尽くされ、天井も想像以上に高い。こんな身分不相応な自分が浸かって

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   24話-4 初めての宮殿でのお勤め。

    * * *ルークス皇帝の料理出しが無事に済むと、フェリシアはユナイトに中庭のことを謝罪したいとエルバートに申し出て、ユナイトを食事室に呼び、エルバートとユナイトと共に夕ご飯こと夕食を食べる。フェリシアとエルバートの前にはルークス皇帝の鶏の白煮込みをアレンジしたもの、ユナイトの前には質素な肉の煮込み料理が置かれている。「あの、ユナイト教官だけ料理が違うのですが」「さすがにルークス皇帝の食事を任されているフェリシア様のお料理を食べる訳には参りません」エルバートに冷ややかな目線を注がれる中、ユナイトは答え、続いて問いかける。「それで、なぜ、私と共に食事を?」「中庭のことを謝りたくて……。ユナイト教官、今日はその、申し訳ありませんでした」「いえ、中庭の修復は時間が掛かりましたが、きちんと直りましたのでお気になさらず」ユナイトはエルバートの顔を見る。「エルバート様も私に何かおありのようですね」「フェリシアの両親について聞きたい」フェリシアは両目を見張る。自分の両親のこと?「やはり、お調べになられておいででしたか」「今は司祭をしておりますが、昔、自分はエルバート様と同じく軍に所属しておりました」「え」フェリシアは驚きの声を出す。「そして、同じ初冬にフェリシア様達が討伐なされた魔がいた神隠しに合うと恐れられた帝都郊外の森までフェリシア様の父であるロイス様、母のラン様、そして亡き前皇帝と共に魔を討伐しに向かうも軍の皆はやられていき」「ロイス様に、お前はまだ若いから逃げろと、ラン様に、ここは私達に任せて、決して振り返らないでと言われ従い、逃げるも途中で約束を破り、振り返ると」ルナイトの顔が儚い表情に変わる。「ロイス様達は前皇帝を庇い、前皇帝も乗っ取られ、亡くなったのを目撃しました」その事実を聞き、フェリシアとエルバートは両目を見開く。「その為、自分のみが生き延びたことを悔やみ、せめて供養したいとブラン公爵邸の近くにある教会の司祭になりたいと自ら志願し」「フ

  • 一通の手紙から始まる花嫁物語。   24話-3 初めての宮殿でのお勤め。

    そして、舞い上がった土が無くなると目の前の地面に大きな穴が空いていた。エルバートはフェリシアを見ると、フェリシアはその光景を目の当たりにし、両目を見開いて固まっており、彼女の瞳が揺れ、地面に崩れ落ちていく。エルバートはフェリシアの身体をとっさに支えた。「大丈夫か?」「はい。ですが、中庭が……」ルークス皇帝は昨日、フェリシアは大変危険な状態にあると仰っていたが、それを身を持って今、感じた。あのまま、ブラン公爵邸にフェリシアをいさせていたらどうなっていたことか。そのことに1番初めに気づけなかった自分が情けない。ルナイトはにこりと微笑む。「いや、宮殿まで被害が及ばず、これ幸いでしたね」「フェリシア様のお力はよく分かりました。本日はこれにてお開きに致しましょうか」* * *その日の夜。フェリシアはピンクがかった長い黒髪をくくった料理番の姿となり、皇帝の側近に台所にあたる厨房まで案内される。ブラン公爵邸の台所も厨房で広く綺麗だけれど、こちらはもっと広く、なんて高貴な厨房なのだろう。身が竦む思いでいるとシェフが近づいてくる。嫌な顔をされると思うも、シェフは、今日から宜しくお願い致しますね、分からないことがございましたら何なりとお聞き下さいと暖かく迎えてくれて、シェフ含め、料理番18名と共に料理を作り始める。けれど、周りの手際の速さに圧倒してしまう。料理番達は普段から宮殿に仕える高貴な者達の料理を、シェフはルークス皇帝の料理を全て任されているものの、今日からは自分がメインを作る為、後の前菜やスープ、デザート等をシェフが作るのだとここに来る前に皇帝の側近から聞いている。自分は令嬢となったけれど、シェフからしたら素人。そんな素人にルークス皇帝の料理を任せるのは嫌だろう。なのに、嫌み一つも言わず、料理作りを全うしている。それに比べ、自分ときたら、猫に加え、中庭まで崩壊させ、ご迷惑ばかり掛けてしまっている。せめて

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status